大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(ネ)17号 判決

控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。<立証省略>

被控訴代理人の事実上の主張は、「当方は小切手法第三十九條第二号に基き遡及権を行使するものである。相手方の抗弁はこれを否認する。」と附演した外原判決摘示と同一であるからここにこれを引用する。控訴人は、答弁として「相手方主張の日時、当方が相手方主張の如き小切手を振出したこと、及び相手方がその主張の日時右小切手を秋田銀行湯沢支店に呈示してその支拂を拒絶せられたことはこれを認める。しかしながら当方は昭和二十三年十二月二十九日相手方がその所有の杉丸太二百石及び木材製品六十七石を訴外第一建設株式会社に賣渡す契約を締結するに際し仲介の労を執つたのであるが、当時右訴外会社では本社から現金の來るのを待つて契約の締結をしなければならなかつた。ところが当時右訴外会社以外にも買受希望者があつた関係上、相手方の切なる要求により当方は右小切手を振出したのであるが、右賣買契約が成立してもしなくても相手方はこれにより取立をしないで必ずこれを当方に返還するという條件の下に唯單に相手方を安心させるために振出した次第であつて、結局当方は債務負担の意思なくしてこれを振出したに過ぎない。右契約は右訴外会社の社長が金員を携えて契約締結に出向く途中、盗難に遭つた等の事情のためついにその締結を見るに至らなかつたのであるが、当方は相手方に損害が発生した場合その担保となるべき趣旨の下に右小切手を振出したものでもないから、当方の債務は所謂自然債務とも云うべきものであろう。上叙の次第で当方は本訴請求に應ずることはできない」と陳述した。<立証省略>

三、理  由

控訴人が昭和二十四年一月七日被控訴人に対し、額面金十万円支拂地株式会社秋田銀行湯沢支店支拂人同上と定めた小切手一通を振出し、被控訴人が同年一月十一日支拂地において支拂人に対し支拂呈示を爲したけれどもその支拂を拒絶せられたことは当事者間に爭のないところである。被控訴人は前記の如く小切手が不渡となつたので小切手法第三十九條第二号により支拂拒絶の宣言を得た上、振出人たる控訴人に対しその遡及権を行使し小切手額面金十万円及びこれに対する法定の遅延損害金の支拂を求めると云うのであるが、小切手法第四十二條により支拂拒絶証書又はこれと同一の効力を有する宣言の作成義務を免除されない限り、右小切手法第三十九條により遡及権を保全する措置を講じなければ遡及権はこれを行使し得ないものであることは同條の規定により明であつて、同條第二号に所謂「小切手に呈示の日を表示して記載し且つ日附を附したる支拂人の宣言」は小切手自体にこれをなすことを要し、小切手の符箋にこれを爲した場合はたといその小切手と符箋との接合目に契印をしてある場合であつても小切手に記載されたものということはできないと解すべきことは、同條の文言並びに小切手法の規定中にこれを符箋に記載することを許容した規定の存しない点から明白である。然るに被控訴人が右宣言を得た証拠として援用する甲第一号証によれば右記載は小切手自体にされて居らず符箋に爲されていることが明かであつて、右小切手につき小切手法第四十二條による拒絶証書又はこれと同一の効力を有す宣言の作成義務の免除された事実は被控訴人の主張立証しないところであり、却つて前記甲第一号証小切手によればかかる事実のないことが明かであるから、右小切手については遡及権保全のための要件はついに具備されていないものといわねばならない。されば爾余の点につき判断を用うるまでもなく被控訴人の本訴請求は上叙の理由により請求自体失当として棄却を免れない。

從つてこれと異趣旨に出でた原判決は不当であつて本件控訴はその理由あるものといわねばならぬので民事訴訟法第三百八十六條、第九十六條、第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 豊川博雅 村上武 三橋弘)

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